タスキメシ 五輪 [本]
「タスキメシ」「タスキメシ 箱根」に続く,3冊目の続編。
2021年3月。
井坂都は,2021年の夏に開催される大規模国際スポーツイベント,すなわちオリンピックの選手村食堂でのアルバイトの面接に来ていた。
新型コロナウイルスの流行による緊急事態宣言とその後のまん延防止重点措置による時短営業のあおりを受けた。そのため都が勤めていた和食店の店主が3月で閉店を決める。
閉店後,飲食業は軒並み休業,閉店が多く,オリンピック選手村の食堂が最も条件が良かったのだ。ただ,コロナ禍で開催されるオリンピックには風当たりも強い。
その選手村食堂の面接で出会ったのが前年の箱根駅伝で10区を走った仙波千早であった。
◇
前作,前前作との繋がりのある3冊目ですので,「タスキメシ」「タスキメシ 箱根」は必読だと思う。
延期になった東京オリンピックの選手村食堂を舞台に,オリンピックを支える裏方の人々が小説で描かれている。
井坂都,箱根を走った後,競技は引退して食品会社に就職した仙波千早。
そのほか「タスキメシ 箱根」「タスキメシ」で登場してきた人々。
実際にあったオリンピックでの出来事が,作品内にエピソードとして出てきている。
コロナ禍での飲食業界の切実さも感じたし,そんな中で行われるオリンピックへの反発もあったし。
厳しい社会情勢の中,都たちのような市井の人々が懸命に頑張ってきた姿が描かれている。フィクションだが,オリンピックの裏方には,このような人がたくさんいたのだろうと思うと,名もなき人々たちに感謝。
ラクしてうまくいく生き方 ~自分を最優先にしながらちゃんと結果を出す100のコツ [本]
ラクしてうまくいく生き方 ~自分を最優先にしながらちゃんと結果を出す100のコツ
- 出版社/メーカー: きずな出版
- 発売日: 2021/05/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
『ラクしてうまくいく生き方』というタイトル通り,著者のひろゆきさんのゆるい感じが特徴的な,生き方の本。
ひろゆき(西村博之)さんは,2ちゃんねるの創始者として有名な方。
さぞかしお金も持っていて……というゲスい勘ぐりをしていたが,この本を読む限り,あんまり働かないし,必要最低限頑張ればいいやとゆるく生きていらっしゃる。
「ラクして,要領よく生きていけたらいいなあ」という人のための,ゆるい人生の指南書である。
2ページ見開きが一項目となり,たとえば,
「『自分ルール』を作りましょう」
「目標はとことん低くしときましょう」
など,生き方のヒントが端的にまとまっています。
ひろゆきさん自身がしゃかりきになって働きたいわけじゃないようで,どれを読んでもユルいです。読んでいて,ホッとするところが多いです。
著書の中で,がんばらないとか,ウソも方便とわりきるとか,実用的でなおかつユルいです。
気負わず,ありのままに生きたいなあという沿うんな人には人生の難所として非常にいいと思います。
反対に,好きな言葉は情熱です,とか,自分を乗り越えていくことに喜びを感じます,っていう人にはあんまり向かない気がします。
ワイには実にしっくり来ました。
90枚のイラストで 世界がわかる はじめての地政学 [本]
地政学という言葉を最近よく聞くようになった。
地政学というのは地理的要因と,世界の国や政治の動きを考える学問。
昨今のウクライナ情勢や中東情勢など,国の勢力や戦争にも関わりがある。国と国の関係を考える大切な学問である。
『初めての地政学』とあるように,地政学の入門書だ。
国を動物化したイラストがとても可愛くて親しみやすい。
日本は柴犬,アメリカはライオン,中国はパンダ,ロシアはホッキョクグマのようにその国を象徴する生き物の言動で,どのような行動をしている国なのかがわかる。
シーパワー,ランドパワーなどという言葉も初めて知った。
これからの社会情勢やそれぞれの国の思惑が,なるほどなあという感じで読むことができた。
世界のどの国も平和を希求しているはずだが,どの国にも,反映していこうという思惑がある。
地理的要因と,国際政治との関わりについて考えるいい機会になった。
52ヘルツのクジラたち [本]
母親や義父たちから疎まれ、それでも義父の介護要員にさせられたキナコと、母からムシと呼ばれ虐待を受けている13歳の子が、山の家の一軒家で暮らしだす。
音楽プレーヤーには52ヘルツのクジラの声。他のクジラたちは10〜30ヘルツの声で対話するのに、その52ヘルツのクジラの声を聞き取れるクジラはいない。
それぞれ心に傷を抱えた者たちが、模索しながら生きていく物語。
◇
再婚した連れ子だという状況、親から疎まれ、捨てられたとも言える状況。
下手に他者が介入すると、陰で親からの虐待がますます酷くなる。
主人公たちの置かれた状況がそれぞれ辛いてす。
もしかしたら私たちはここに出てくる老人会の会長のように理想の家族からはみ出した人を、異なものとして感じ、無意識的にも排除してしまっているのかもしれない。
読んでいて、しんどいシーンも多かったです。
キナコたちの希望が、孤独な52ヘルツのクジラの声に象徴されているような気がしています。
キナコたちが、ささやかな幸せをもって生きていけたら良いのになと感じました。
とうきょうの電車大百科 増補改訂版 [児童書]
首都圏を走る様々な電車(一部機関車)がオールカラーで紹介されています。
首都圏の電車は,日に日に新しくなっているので,このシリーズは何度か改訂されている模様。
今回紹介するのは,2022年10月発行の増補改訂版です。
JR東日本,関東の大手私鉄,また貨物列車やSL列車,都電荒川線のような路面電車,モノレールまで,おおよそ「電車」とくくられるものはカラー写真で紹介。
「旅と鉄道」編集部が作っているとあり,電車の写真がとても綺麗で見やすいです。
また,目立つリード文の他に,それぞれの写真により細かい説明があって,小さい子は大きい文字だけを読めばいいし,ある程度自分で本が読めるようになった子は自分で解説文まで読めば,さらに電車に詳しくなれる本です。
子ども向けではありますが,鉄道の知識や情報に関してはそれなりに盛り込んであるので,鉄道エントリー層にも良いかもしれません。
私ぐらいのライトな電車好きが読むにも,非常にわかりやすくて読みやすかったです。
モノクロの夏に帰る [本]
一冊の本をもとに,それぞれの登場人物が,戦争について,どう考え,どう行動するかを考える連作小説。
第一話「きみがホロコーストを知った日へ」
第二話「戦略的保健室登校同盟」
第三話「平和教育の落ちこぼれ」
第四話「Remember」
作中作の『時をかける色彩』という,戦前戦時中のモノクロ写真をAIでカラー化するプロジェクトが組まれ,それを写真集化したものが出版された。
第一話では,主にカリスマ書店員の,第二話では保健室登校をする女子中学生二人の,第三話では広島出身のテレビディレクターの,第四話では日本の高校に転入してきた,アメリカ人と日本人のミックスの高校生の,それぞれの視点と立場で,戦争について模索していく小説。
◇
様々な立場の人物を,それぞれの物語の主人公に据えて展開していく話は,額賀さんの作品には多いが,よくもまあこれだけ多視点で……と驚かされる。
おためごかしのように「戦争はするべきではない」「戦争の悲惨さを次世代に伝えねばならない」というだけではなく,それぞれの人物が戦争についてどう悩み,真摯に向き合って考えたのかを,心情にそって読み進められる作品だった。
塞王の楯 [本]
時は戦国時代。
近江穴太に、穴太衆といわれる石垣職人たちの集団があった。その中でも随一の知識と技術を持っていたのは、飛田源斎を頭とする飛田屋。強固な石垣を造ることから飛田屋の頭は「塞王」と呼ばれている。
もとは一乗谷の戦いで身寄りをすべて失い、孤児となっていた匡介は、源斎に助けられ飛田屋の跡継ぎとなった。
また、北近江の国友村に、国友衆と呼ばれる職人集団があった。穴太衆が最強の「楯」と呼ばれるのに対し、国友衆は至高の「矛」、すなわち鉄砲を作る職人たちである。
その国友衆の中でも鬼才と呼び声の高いものが国友彦九郎である。穴太衆随一の職人である源斎が「塞王」ならば、国友衆の彦九郎は「砲仙」とよばれ、比するものない鉄砲を作る職人集団の頂点に立つ。
太閤秀吉亡き後、再び乱世へ。武士たちが東と西に別れ、近江の大津城で互いに並ぶ者ない「楯」と「矛」が相見える……。
◇
戦国時代の戦いを、武士ではなく職人の目線で語られていて、その文章量の割に、後半は、一気に読み進めました。
それぞれの立場で戦のない泰平の世を願っていながら、それぞれの正義、技への矜持を持った人物たちの姿が目に浮かぶよう。
質量ともに読み応えがありました。
オリンピックを殺す日 [本]
オリンピックを殺す日
堂場瞬一さんの,スポーツを取り巻く小説。
東日スポーツの菅谷健人(すがやたける)は,世界レベルの新しい競技大会が計画されているらしいという噂を耳にする。
それはオリンピックを揺るがす存在となるらしい。
だが,その大会の内容を知っているアスリートや関係者たちは緘口令が敷かれているためか,皆口を噤む。
『ザ・ゲーム』その大会の意図とは一体何なのか……。
◇
アスリートの心情や立場,それにかかわるマスコミ,オリンピックのような世界大会の陰で蠢く多くのスポンサー企業など,スポーツ小説の面よりは社会派の小説だと感じました。
オリンピックでメダルが取れなかったことを謝る選手たち,成績によってはSNSでバッシングを与える視聴者,本来,スポーツの頂点を目指す大会のはずが,周りの雑音によって,アスリートたちが緊張を与えられている……。
アスリートにストレスを与えるメディアのあり方についても,一石を投じる小説だったのではないでしょうか。
ちょっと気になった言葉 [本]
いま、『河岸忘日抄』堀江敏幸・著 新潮社 読んでいるのですが、ちょっと気になった言葉。個人的メモ。
以下引用。
「言葉は、誰だって出来合いのものを学ぶんですよ。それこそ小学校の教科書に載っているようなものをね。辞書を引けば、意味が載ってる。でも、その出来合いの言葉を、どんな状況でどんなふうに用いるかによって、無限の個性が生まれるんです。ただし、組み合わせた結果がどんなに面白くても、なぜそうなったかについては説明がつかないんですよ」
言葉は無限だ。
いま自分が使っている言葉に、それ以上のものを見い出す人もいる。
必ずしも、重なるとは限らない。だから難しいし、面白い。
そんな気がする。
『河岸忘日抄』書かれていることは面白いんですが、自分で理解しきれてないです。
読み終わってもブクログに上げられない気もするのですが、それはひとえにワイの頭がたりなくて文章化が難しいからで、本そのものはいろいろなものを与えてくれたと思っています。
以下引用。
「言葉は、誰だって出来合いのものを学ぶんですよ。それこそ小学校の教科書に載っているようなものをね。辞書を引けば、意味が載ってる。でも、その出来合いの言葉を、どんな状況でどんなふうに用いるかによって、無限の個性が生まれるんです。ただし、組み合わせた結果がどんなに面白くても、なぜそうなったかについては説明がつかないんですよ」
言葉は無限だ。
いま自分が使っている言葉に、それ以上のものを見い出す人もいる。
必ずしも、重なるとは限らない。だから難しいし、面白い。
そんな気がする。
『河岸忘日抄』書かれていることは面白いんですが、自分で理解しきれてないです。
読み終わってもブクログに上げられない気もするのですが、それはひとえにワイの頭がたりなくて文章化が難しいからで、本そのものはいろいろなものを与えてくれたと思っています。
あの人とここだけのおしゃべり [本]
あのひととここだけのおしゃべり―よしながふみ対談集 (白泉社文庫)
- 作者: よしなが ふみ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2013/04/26
- メディア: 文庫
よしながふみさんの対談集。
三浦しをんさん、羽海野チカさん、萩尾望都さん、堺雅人さんなど、様々なジャンルの人と漫画を中心に対談。
三浦しをんさんがもともと好きで、そちらがこの本を読もうとしたきっかけでした。
三浦さんとの対談で、幅広い範囲での漫画についての語り、それこそ好きだからなんでしょうけど質量ともに圧倒されました。
他の方々との対談も、互いに漫画への深い造詣を感じるものでした。
私が全く知らない漫画も多く、もっと漫画を読んでいたら、更に楽しめたんだろうなと思いました。