塞王の楯 [本]
時は戦国時代。
近江穴太に、穴太衆といわれる石垣職人たちの集団があった。その中でも随一の知識と技術を持っていたのは、飛田源斎を頭とする飛田屋。強固な石垣を造ることから飛田屋の頭は「塞王」と呼ばれている。
もとは一乗谷の戦いで身寄りをすべて失い、孤児となっていた匡介は、源斎に助けられ飛田屋の跡継ぎとなった。
また、北近江の国友村に、国友衆と呼ばれる職人集団があった。穴太衆が最強の「楯」と呼ばれるのに対し、国友衆は至高の「矛」、すなわち鉄砲を作る職人たちである。
その国友衆の中でも鬼才と呼び声の高いものが国友彦九郎である。穴太衆随一の職人である源斎が「塞王」ならば、国友衆の彦九郎は「砲仙」とよばれ、比するものない鉄砲を作る職人集団の頂点に立つ。
太閤秀吉亡き後、再び乱世へ。武士たちが東と西に別れ、近江の大津城で互いに並ぶ者ない「楯」と「矛」が相見える……。
◇
戦国時代の戦いを、武士ではなく職人の目線で語られていて、その文章量の割に、後半は、一気に読み進めました。
それぞれの立場で戦のない泰平の世を願っていながら、それぞれの正義、技への矜持を持った人物たちの姿が目に浮かぶよう。
質量ともに読み応えがありました。
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