オリンピックを殺す日 [本]
オリンピックを殺す日
堂場瞬一さんの,スポーツを取り巻く小説。
東日スポーツの菅谷健人(すがやたける)は,世界レベルの新しい競技大会が計画されているらしいという噂を耳にする。
それはオリンピックを揺るがす存在となるらしい。
だが,その大会の内容を知っているアスリートや関係者たちは緘口令が敷かれているためか,皆口を噤む。
『ザ・ゲーム』その大会の意図とは一体何なのか……。
◇
アスリートの心情や立場,それにかかわるマスコミ,オリンピックのような世界大会の陰で蠢く多くのスポンサー企業など,スポーツ小説の面よりは社会派の小説だと感じました。
オリンピックでメダルが取れなかったことを謝る選手たち,成績によってはSNSでバッシングを与える視聴者,本来,スポーツの頂点を目指す大会のはずが,周りの雑音によって,アスリートたちが緊張を与えられている……。
アスリートにストレスを与えるメディアのあり方についても,一石を投じる小説だったのではないでしょうか。
ちょっと気になった言葉 [本]
いま、『河岸忘日抄』堀江敏幸・著 新潮社 読んでいるのですが、ちょっと気になった言葉。個人的メモ。
以下引用。
「言葉は、誰だって出来合いのものを学ぶんですよ。それこそ小学校の教科書に載っているようなものをね。辞書を引けば、意味が載ってる。でも、その出来合いの言葉を、どんな状況でどんなふうに用いるかによって、無限の個性が生まれるんです。ただし、組み合わせた結果がどんなに面白くても、なぜそうなったかについては説明がつかないんですよ」
言葉は無限だ。
いま自分が使っている言葉に、それ以上のものを見い出す人もいる。
必ずしも、重なるとは限らない。だから難しいし、面白い。
そんな気がする。
『河岸忘日抄』書かれていることは面白いんですが、自分で理解しきれてないです。
読み終わってもブクログに上げられない気もするのですが、それはひとえにワイの頭がたりなくて文章化が難しいからで、本そのものはいろいろなものを与えてくれたと思っています。
以下引用。
「言葉は、誰だって出来合いのものを学ぶんですよ。それこそ小学校の教科書に載っているようなものをね。辞書を引けば、意味が載ってる。でも、その出来合いの言葉を、どんな状況でどんなふうに用いるかによって、無限の個性が生まれるんです。ただし、組み合わせた結果がどんなに面白くても、なぜそうなったかについては説明がつかないんですよ」
言葉は無限だ。
いま自分が使っている言葉に、それ以上のものを見い出す人もいる。
必ずしも、重なるとは限らない。だから難しいし、面白い。
そんな気がする。
『河岸忘日抄』書かれていることは面白いんですが、自分で理解しきれてないです。
読み終わってもブクログに上げられない気もするのですが、それはひとえにワイの頭がたりなくて文章化が難しいからで、本そのものはいろいろなものを与えてくれたと思っています。
あの人とここだけのおしゃべり [本]
あのひととここだけのおしゃべり―よしながふみ対談集 (白泉社文庫)
- 作者: よしなが ふみ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2013/04/26
- メディア: 文庫
よしながふみさんの対談集。
三浦しをんさん、羽海野チカさん、萩尾望都さん、堺雅人さんなど、様々なジャンルの人と漫画を中心に対談。
三浦しをんさんがもともと好きで、そちらがこの本を読もうとしたきっかけでした。
三浦さんとの対談で、幅広い範囲での漫画についての語り、それこそ好きだからなんでしょうけど質量ともに圧倒されました。
他の方々との対談も、互いに漫画への深い造詣を感じるものでした。
私が全く知らない漫画も多く、もっと漫画を読んでいたら、更に楽しめたんだろうなと思いました。
むき出し [本]
「むき出し」兼近大樹・著 文藝春秋
EXIT兼近大樹さんの、自伝的小説。
お笑いコンビentranceの石山。
人気も上昇してきて、上京直後の安アパートから、シェアハウスではあるが、いい部屋で暮らせるようになってきた。
そんなある日、ラジオ収録の後、タクシーを途中で降りて、街を歩いていると、週刊誌の記者に呼び止められた。
石山の過去のスキャンダル記事が出るという……。
◇
主人公、石山の子供時代、現在のラジオを行き来しながら、これまでの人生を綴っている。
貧しかった子供時代。
父親と母親が不仲。
身の回りのことを蔑ろにしていたこと。
からかわれ、それに対して暴力を振るっていた日常。
読み進めていて、子供時代が非常に辛くなりました。
他の子供が、当たり前のように勉強、部活動に打ち込めるのに、金銭的な理由から思うようにできない。
全く違う世界の話だからと、やりたいと願うこともない。生きる世界が違うと最初から諦めてしまっている。
主人公石山が留置所で読んだ、『第二図書係補佐』。そこから人生が変わり始めていく描写がすごいと思います。
お笑いを目指すようになり、自分自身を見つめ、世間とのズレを少しずつ埋めていく。それまでの石山自身の常識を疑い変えていくこと。心のうちの変化を一つ一つ丁寧に描かれていたように思いました。
きみはポラリス [本]
「恋愛をテーマにした短編」11編をまとめたもの。
この中には、結ばれることがない悲しみを描いたもの、結ばれたはずなのにどこか寂しさを感じるもの。
ただ幸せだと言い切れないようなどこか影を描いたもの。
様々な愛の形がこの本にあります。
この中で、最初の『永遠に完成しないニ通の手紙』と最後の『永遠につづく手紙の最初の一文』が、ある意味、プロローグとエピローグのような気がしているのです。
天真爛漫に腐れ縁ともいえるような友人に、好きな女の人に手紙を書きたいという寺島良介。それを聞きながら、寺島への思いを心に閉じ込める岡田勘太郎。
この短編集、バラエティに富んでいます。
同性愛、不倫、親子の愛、宗教的な愛、三角関係、いろいろな形で描かれる恋愛模様。幸せなだけではない、複雑な思いを抱えたものも。
読後感がすっきりするものばかりではありませんが、とにかくすごいと感じました。
仏果を得ず [本]
文楽の世界が舞台の小説。
健(たける)は文楽の太夫。文楽の技芸員は太夫、三味線、人形遣い。
それぞれ師匠と弟子の関係は絶対である。
健の師匠、笹本銀太夫(ささもとぎんたゆう)から、突然、三味線の鷺澤兎一郎(さぎさわといちろう)と組めと言われる。この兎一郎、実力は確かだがかなり変わった人物。
健が楽屋に挨拶に行くにも兎一郎はいない。太夫と三味線は夫婦にも例えられるくらいなのに、合わせて練習もできず、これでいいのか……。
◇
文楽という、私達には馴染みが薄い伝統芸能の世界を精緻に描かれています。
義太夫に打ち込みながらも、芸事の道には終わりはないこと。
真剣に打ち込まなければならないのに、恋愛で心乱され、それが義太夫の語りにも表れてしまっていること。
迷いながら義太夫の道を進み続ける健と、それを導く、相方の三味線の兎一郎や師匠。
文楽がどんなものか知らなかったけれど、健が迷いながらも進んていく姿に共感しました。
JR東海道線・横須賀線沿線の不思議と謎 [本]
JR東海道線・横須賀線沿線の不思議と謎 東京近郊編 (じっぴコンパクト新書)
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2018/05/31
- メディア: 新書
東海道線・横須賀線の歴史,特徴などをわかりやすく紹介してくれています。
東海道線の貨物線,品鶴線と,東京貨物ターミナル駅から小田原駅までの路線を,地図でわかりやすく紹介。
その品鶴線が横須賀線に使われています。
また,東海道線・横須賀線の各駅もそれぞれ紹介されています。
JR横須賀駅で複線から単線になる都合で,横須賀駅は乗り換えのための階段が不要。階段がない人に優しい駅ということで関東の駅百選にも選ばれているとのこと。
それから,田浦駅はトンネルとトンネルの間にできた駅で,ホームの長さが制限され,11両編成の1両がホームからはみ出すため,ドアカットといって,駅に停車していてもドアが開かない措置が取られています。
昔,そんな事を考えずになんとなく真ん中の方の車両に乗ってしまっていたので,じっくりとドアカットを見に行きたいです。
この本で,東海道線,横須賀線のさまざまな豆知識を得られました。
一度きりの大泉の話 [本]
1970〜1972年、著者の萩尾望都さんは、上京して大泉にある二階建ての借家で暮らし始めた。同居人は竹宮惠子さん。
後に『大泉サロン』と呼ばれるようになる若手新鋭少女漫画家達の集まりである。
萩尾さんたちが暮らす家には多くの駆け出しの漫画家が集まってきた。二人の漫画家のアシスタントとしてだったり、遊びに来て漫画について語ったり。
24時間、いつだって漫画について語れる楽しい場所だった。はずなのに。
◇
この本には、萩尾望都さんの立場で、同居していた頃のことが書かれています。
この本を読む限り、萩尾さんの気持ちを考えると辛いです。
大泉の家に次々と若手の少女漫画家が集まって、沢山の作品を生み出し、様々な交流があって、萩尾さんも楽しい日々だったと回想していらっしゃいます。
貴重だった大泉での時間。その後上井草に引っ越して、さらに竹宮惠子さんから言われたことがきっかけで上井草も離れて、埼玉の緑深い田舎に引っ越したこと。
「個性のある創作家が二人、同じ家に住んではだめなのよ」
木原敏江さんのこの一言が全てではないのかなと思っています。
萩尾さんと竹宮さんの対立構図のように表面的に見えるけれど、お互い漫画家としてのリスペクトはあるのだと感じます。
そして道が離れてしまったことも、宿命であったのかもしれません。
萩尾さんの、もうそっとしておいてほしい、今は今で静かに過ごしたいという気持ちがなんとも……。
非常に難しいものだなあと辛くなりました。
拝啓、本が売れません [本]
作家,額賀澪さんによる,編集者,書店員,WEBコンサルタント,映像プロデューサー,ブックカバーデザイナーへのインタビュー本。
出版不況で,とかく「本が売れない」と言われ続ける昨今。
ゆとり世代の作家と自称されている額賀さん。元気のない出版業界を生き抜くべく,様々なところに出向き,様々な人と話をし,売れる本とはなんぞや?と模索する姿を描いた本です。
編集者による本の出版の仕組み,宣伝の仕組みから,書店での販売促進の展開など,出版業界の実態を垣間見た気がします。
また,映像化,メディアミックス展開など,いろいろな要素が重なって人気の作品になっていくのだということも感じます。
ただ,インタビューに応じた人が,売れるために何が必要なのか,みな共通して語っていたことは。
「いい本,面白い本であること」
結局は本そのものの面白さ,作品の良さが決め手なんだなあと感じました。
本を作る過程で様々な人が関わっていて,それらの人がチームになって一冊の本を売るために尽力しているのだなということをこの本で知りました。
巻末には,『拝啓,本が売れません』のために取材をして,様々学んだことを活かし,額賀さんが書かれた『風を恋う(仮)』の第一章が載っています。
未校正の部分がありますが,贅沢な仕様ですね。
私,先に『風を恋う』読んでますが,個人的にはとても良い,実に良い本でした。
そして,バトンは渡された [本]
森宮優子。
今まで,父親は三人,母親は二人。家族の形態は七回変わった。
これだけ家族が変わると,新しい父親や母親に緊張したり,家族のルールに対応しきれなかったり,と困ることもあるけれども,総じて幸せな人生を送ってきたといえる。
優子の今の人生と,それから,今までたどってきた家族との暮らしが穏やかに,描かれている。
◇ ◇ ◇
思い込みかもしれないけれど,物語の主人公,優子のように,ステップファミリーだと何かと辛かったり苦しかったりすることがあるんじゃないかと感じるが,それはたぶん見る自分側の傲慢な思い込みだ。
家族が変わるたび優子は暮らしぶりも変わっていく。それに慣れていくのに少し戸惑うことがあるけれど,どの親からもそれぞれのやり方で大切にされてきた。
じわりと温かくなる作品。
親子のあり方とは何かを,考えさせられます。
血が繋がっているから親子の情が強いというものでもないし,繋がっていなくても,人として子供を大切にする思いは変わらないのだなと感じました。