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52ヘルツのクジラたち [本]


52ヘルツのクジラたち

52ヘルツのクジラたち

  • 作者: 町田そのこ
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: Kindle版

 母親や義父たちから疎まれ、それでも義父の介護要員にさせられたキナコと、母からムシと呼ばれ虐待を受けている13歳の子が、山の家の一軒家で暮らしだす。
 音楽プレーヤーには52ヘルツのクジラの声。他のクジラたちは10〜30ヘルツの声で対話するのに、その52ヘルツのクジラの声を聞き取れるクジラはいない。
 それぞれ心に傷を抱えた者たちが、模索しながら生きていく物語。

 ◇

 再婚した連れ子だという状況、親から疎まれ、捨てられたとも言える状況。
 下手に他者が介入すると、陰で親からの虐待がますます酷くなる。
 主人公たちの置かれた状況がそれぞれ辛いてす。
 もしかしたら私たちはここに出てくる老人会の会長のように理想の家族からはみ出した人を、異なものとして感じ、無意識的にも排除してしまっているのかもしれない。

 読んでいて、しんどいシーンも多かったです。
 キナコたちの希望が、孤独な52ヘルツのクジラの声に象徴されているような気がしています。
 キナコたちが、ささやかな幸せをもって生きていけたら良いのになと感じました。

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とうきょうの電車大百科 増補改訂版 [児童書]


とうきょうの電車大百科 増補改訂版 (旅鉄kids)

とうきょうの電車大百科 増補改訂版 (旅鉄kids)

  • 出版社/メーカー: 天夢人
  • 発売日: 2022/10/17
  • メディア: 単行本

 首都圏を走る様々な電車(一部機関車)がオールカラーで紹介されています。
 首都圏の電車は,日に日に新しくなっているので,このシリーズは何度か改訂されている模様。
 今回紹介するのは,2022年10月発行の増補改訂版です。

 JR東日本,関東の大手私鉄,また貨物列車やSL列車,都電荒川線のような路面電車,モノレールまで,おおよそ「電車」とくくられるものはカラー写真で紹介。

 「旅と鉄道」編集部が作っているとあり,電車の写真がとても綺麗で見やすいです。
 また,目立つリード文の他に,それぞれの写真により細かい説明があって,小さい子は大きい文字だけを読めばいいし,ある程度自分で本が読めるようになった子は自分で解説文まで読めば,さらに電車に詳しくなれる本です。

 子ども向けではありますが,鉄道の知識や情報に関してはそれなりに盛り込んであるので,鉄道エントリー層にも良いかもしれません。
 私ぐらいのライトな電車好きが読むにも,非常にわかりやすくて読みやすかったです。

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モノクロの夏に帰る [本]


モノクロの夏に帰る (単行本)

モノクロの夏に帰る (単行本)

  • 作者: 額賀 澪
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2022/07/20
  • メディア: 単行本

 一冊の本をもとに,それぞれの登場人物が,戦争について,どう考え,どう行動するかを考える連作小説。

 第一話「きみがホロコーストを知った日へ」
 第二話「戦略的保健室登校同盟」
 第三話「平和教育の落ちこぼれ」
 第四話「Remember」

 作中作の『時をかける色彩』という,戦前戦時中のモノクロ写真をAIでカラー化するプロジェクトが組まれ,それを写真集化したものが出版された。
 第一話では,主にカリスマ書店員の,第二話では保健室登校をする女子中学生二人の,第三話では広島出身のテレビディレクターの,第四話では日本の高校に転入してきた,アメリカ人と日本人のミックスの高校生の,それぞれの視点と立場で,戦争について模索していく小説。

 ◇

 様々な立場の人物を,それぞれの物語の主人公に据えて展開していく話は,額賀さんの作品には多いが,よくもまあこれだけ多視点で……と驚かされる。
 おためごかしのように「戦争はするべきではない」「戦争の悲惨さを次世代に伝えねばならない」というだけではなく,それぞれの人物が戦争についてどう悩み,真摯に向き合って考えたのかを,心情にそって読み進められる作品だった。

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