少年の名はジルベール [本]
漫画家、竹宮惠子さんが、ご自身を振り返ってかかれた話。
主に、故郷徳島から上京してきて、東京で漫画家としてのスタートを切ってから、同じ頃デビューした漫画家萩尾望都さんと大泉で暮らした「大泉サロン」でのことを書かれています。
後々、プロデューサー的な働きをされる増山法恵さんとの関係。
少女漫画版「トキワ荘」のように、「大泉サロン」に竹宮さん、萩尾さんを慕って集まってきます。漫画家仲間や、若手漫画家、デビュー前だけど才能の片鱗のある人々。
竹宮さん自身は、その環境に多大な影響を受けたし、増山さんなどの文学や芸術の教えもあり、充実した日々だったように見えます。
当時はタブーとされていた少年どうしの愛について描きたい、けれども編集者のYさんとの売れる雑誌を作る立場の人との衝突もあり。
それでも後に『風と木の詩』となる作品を描きたいという強い思いがあったのだなあと感じました。
ただ、萩尾望都さんの作品の物語性、その深さに焦りや嫉妬、苛立ちもくすぶっていたのでしょう。
ヨーロッパへの取材旅行を経ても、萩尾さんへの嫉妬は消えることはなく、袂を分かつことになります。
後々、「風と木の詩」「地球(テラ)へ」などの作品で、その人気を不動のものにしていきます。
この本は竹宮さん側の思いを綴ったものです。
漫画家として、自分の望む作品を生み出す苦しさや、自分が描きたいものが編集部に理解されないことの苦しさが、竹宮さんの言葉で書かれています。
今までになかった漫画を生み出す、漫画も芸術的なんだと作品で主張する姿勢がすごいと思いました。
後日、『一度きりの大泉の話』で萩尾望都さんの立場で大泉サロンのことも読んでみたいと思っています。
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