空への助走 福蜂工業高校運動部 [本]
「2.43 清峰高校男子バレー部」シリーズのライバル校であった,福蜂工業高校などを舞台に書かれた短編集。
4つの短編で構成されています。
それぞれが独立しているので,どれから読んでもいいかと思います。
もちろん「2.43 清峰高校男子バレー部」を読んでいると世界観がつながるところがありますが,読んでいなくても問題なく,それぞれの短編小説を楽しめると思います。
「強者の同盟」
福蜂工業バレー部,高杉潤五と,同じ中学校で同じクラスだった,尋慶女子のテニス部,赤緒梓。
お互い部活では,誰にも負けないとの自負があって,それぞれ強豪校に進んだ。
だが,強いところで一番になりたいという高杉が選んだ,福蜂工業の同じ学年には,もっと強い相手がいた。……三村統。
「空への助走」
荒島涼佳は,小学校のから体格が良かったけれども,走るのが速かった。ついたあだ名は「ブブ佳」。
進学した福井県立明日岡高校。陸上部に入った涼佳は,部の先輩,荒島拓海と再会する。
小学生の頃,同級生に散々からかわれたのを,一瞬で黙らせてくれた1つ上の上級生。
「途中下車の海」
福蜂工業高校柔道部の主将,長谷忍。
本立乱取りで後輩の女子,古賀あゆみと組んだとき,自分より格下で,しかも女子のあゆみに寝技で締められたことにショックを受け,さらに顧問の通称シャークに説教された。
それがきっかけで,突発的に学校をサボり,海に向かう列車に乗った。
その日長谷はちょっとした事故で海に落ち,それを助けてくれた同級生の平政洋から,頼まれごとをされる。
釣り部に入ってくれ。幽霊部員でもいいから。
「桜のエール」
前の三編に登場した,福蜂工業バレー部,柔道部,陸上部(明日岡高校のライバル校としてほんの少しですが)。
後日譚のような,爽やかな短編。
どの話もそれぞれ良いです。
高校生の部活に掛ける青春というか,強豪校としての誇りやプライドのようなものと,それに負けずに自分自身も強く在りたいという向上心と。ええなあ。
個人的に印象に残ったのが3番目の「途中下車の海」。
えちぜん鉄道,通称えち鉄がいい味出しているんですよ。
主人公の長谷と,同じクラスだけどヤンキー的なビジュアルでほとんど交流のなかった平政とが,車内で交わす会話がとてもいいのです。
やっぱり車窓の情景って,なにか心の内に持っているものを吐露したくなるというか,人の心を動かす何かがあるんですよね。
えち鉄,乗りに行きたいなぁ。
本編には全く関係ない感想ですが,ネタバレはせずに済んだ(笑)。
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