ぶらんこ乗り [本]
三つ年下の弟はとても賢い。そして人とは違う感性を持っていた。
子供の頃もらったノートに記された字はきれいで,そこに記された弟の物語は,どこか,超越した不思議な感性を持っている。
優れているが,それを理解するのはむずかしい。弟はどこか孤独だったのではないか。
そんな弟が,学校のぶらんこから落ちる事故をきっかけに言葉を失う。いや声を失ったのではなく,とても恐ろしい,おぞましい声になってしまった。それで,何も話さなくなった。
高い木の上に作られたぶらんこに乗って,弟はたくさんの物語を書いた。それを私は読んで……。
物語に登場する「弟」も独自の感性をもっているが,もしかしたらいしいしんじさんの感性にもつながるものなのかなあと感じた。
ちょいちょい,どこか遠いところに飛ばされてしまいそうな,弟の悲しみと,それを見守る姉としての私の悲しみ。ものすごく透明な,ある意味超越した感覚なのかもしれないなあと思った。
コメント 0