いつか王子駅で [本]
東京,路面電車の走る街。
時間給で講師をし,時々翻訳の仕事をする「私」が,この街に越してきて見た光景や感じたことを回想して,昭和の下町の暮らしを感じさせる小説。
背中に昇り龍を背負う印鑑職人の正吉さん。定食も出すカウンターだけの小さな居酒屋「かおり」の女将。一般書と近代文学を主に扱う古書店店主の筧さん。
その他,下町に生きる様々な人,比較的時間の自由が効く私が,自転車や路面電車などで王子駅近辺,飛鳥山やあらかわ遊園など都電荒川線沿いをぶらりとしたり。講師の仕事で行く品川,鮫洲あたりをうろうろしたり。昭和,戦後だろうけれども現代よりゆったりとした速度で生きている人々の情景。
合間合間に挟み込まれる,古書,童話,されに競馬の話。
下町の市井の人々の緩やかに繋がっている暮らしぶりを感じました。
必要以上に踏み込むわけでもない,でも姿が見えなくなると心配だし,どこかで人と人が柔らかく繋がっています。穏やかな情景が心地よいです。
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