墨のゆらめき [本]
主人公の続 力(つづき ちから)は、西新宿にある小規模なホテル、三日月ホテルのホテルマン。
古く、こぢんまりとしてはいるが、客室にはゆとりがあり、眺めもいい、水まわりのリフォームもなされていて、人気のホテルである。
宴会や結婚式などで筆書きの招待状や案内状を書く人を筆耕士といい、三日月ホテルでは外部の書道教室の先生や書道の段を持っている人を登録している。
その筆耕士のうちの一人、遠田 薫(とおだ かおる)氏は先代の康春氏から代替わりし、一度訪ねる必要があった。
下高井戸から狭い暗渠の道を少し歩いたところに、その遠田書道教室はあった。
この遠田薫氏、書道教室だけでなく代筆業までやっている。力はその代筆業の手伝いなどで、薫に巻き込まれることになる……。
◇
書や手紙を通じ、ビジネスだけでなく人としての温かいつながりが感じられる。
男子2人の友情ものは三浦さんは多く書かれているけれども、今作も心のつながりを感じる。
書に対する真摯さも、書から滲み出る人柄もあるのだなあと読んでいてワクワクした。
読んだのは紙の本だったが、AmazonオーディオブックAudibleのために書き下ろされているので、耳で聞いてみるとまた違う感じ方になるのか興味がある。
転職の魔王様2.0 [本]
ドラマ化もされた「転職の魔王様」の続編。短編連作で、転職エージェントを題材に、働くとは、生きるとはを考えされられる作品。
前作で未谷千晴は、新卒で就職したブラックな広告代理店を退職した。その後、叔母が社長を務める転職エージェントの『シェパード・キャリア』社でキャリアアドバイザー見習いから、正式にキャリアアドバイザーとして働くようになった。
転職の魔王様2.0でも、来栖嵐の歯に衣を着せない毒舌ぶりは健在。
毒舌ながらも、転職希望者に現実を突きつけ、働くことについて否応なく考えさせてから、適した職に再就職させる手腕は確か。
さらに、シェパード・キャリアに転職の天使様こと天間聖司がやってきた。来栖とは反対に、手取り足取り丁寧に世話を焼き、紹介先の企業で一日職場体験までしてくる過保護ぶり。
個性豊かな仲間に囲まれて、千晴はキャリアアドバイザーの仕事に向き合っていく。
◇
自分の仕事観について考えさせられた。
働くことも大変だと感じるし、仕事との距離感を考えた。
この小説の第四話「優等生は、社会に出たら気をつけないといけないんですよ」が自分にも刺さってしまった。
真面目に努力すれば、できると評価される。けれどそれが当たり前になって次々と仕事の負担が増えてくる。できて当然の空気になって誰からも感謝されなくなる。ストレスだけが溜まっていく。
なんか仕事してるとき辛かったなあって思い返してしまった。
仕事について、考えさせてくれる作品でした。
ドラマも楽しんで見ています。
2.0に出てきた転職王子の話もあるとは。
早川書房,新訳版「ピーターラビットのおはなし」を読んで [絵本]
雑な読書感想文のようなタイトルですみません。
昭和生まれの古い私にとっては,ビアトリクス・ポター「ピーターラビットのおはなし」といえば,石井桃子さん訳の福音館書店のものなんですよ。
それが,2022年3月に,新訳版として川上未映子さん訳で早川書房から出ているんです。
私,詳しいことはわかりませんが,読み比べた感想を。
やっぱり石井桃子さん訳のほうが好きだな~。
好きか嫌いかだけで言ってしまうのはなんなんですが,子どもの頃から親しんできた文章で,品の良さを感じるんですよね。
読みだしたら,本の中は別世界という感じで。
これは個人的な好き嫌いの話なのであれなんですけど申し訳ない。
ただ,翻訳の文に時代を感じるというのはあって,少し古めかしさも感じるので,今の子どもたちには川上未映子さん訳の文のほうが,しっくりくるのかもしれないなあとも感じているのです。
ビアトリクス・ポターさんの綴った同じ情景の英語から,日本語に訳すときに,こんなにも訳者で文章が変わるんだなっていうのは,自分にとって発見です。
あと,早川書房刊の新訳版の方には「肉のパイにされてしまったピーターのお父さん」など,英語版(私が持っているのは2002年版ですが)には載っている絵と,PUBLISHIER'S NOTE(2002年英語版)がそのまま翻訳されて載っています。
それを見ながら,そうか早川書房の方は,2002年版の本家の英語版の新板に忠実に本を作っているのだと気づきました。
乗り鉄エキスパート [本]
駅すぱあとの熟練の社員さん4人、乗換BIG4が、鉄道の乗り方やダイヤの読み方、旅の計画の組み方について紹介した本。
乗り鉄の流儀で始まり、旅の目的、何を楽しみたいかを明確に。
旅の計画の立て方、きっぷのルールや買い方、おすすめの路線、列車など。
必ずしも鉄道だけを使うというのではなく、旅を効率よくするために飛行機や高速バスなどの活用も勧めている。
最後の章は乗換BIG4の、今まで行ったところで印象に残った旅。
必ずしもスムーズに進んだ旅ではなくて、悪天候で列車が運休になったり、ダイヤ遅れで乗り継げるはずの列車に乗れなかったものが紹介されている。
旅の途中で何かあったときに、それをリカバリーするって大変だし、それをうまく乗り越えたときってものすごく印象に残るのかなって思いました。
ショートショートドロップス [本]
なぜ迷う? 複雑怪奇な東京迷宮駅の秘密 [本]
なぜ迷う? 複雑怪奇な東京迷宮駅の秘密 (じっぴコンパクト新書)
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2017/07/07
- メディア: 新書
東京には、たくさんの人々が住んでいる。そして東京の職場や学校に通っている人もたくさんいる。
そんな多くの通勤・通学客が鉄道を利用し、駅を通り過ぎていく。
迷宮(ダンジョン)とでも言うべき巨大な駅は、いつどのような経緯でできたのか。
それを鉄道の工事の面、路線や地域の開発の面から書かれている。
最初に、鉄道の駅に出てくる島式ホーム、相対式ホームの用語の説明を書いてあるところも詳しい。
まったく知識がない人にもわかりやすいと思う。
ダンジョン駅は、そのでき方から分けて紹介されている。
次々につないでいった「切り貼り駅」
ホームが何層も重なった「立体構造駅」
シンプルなのに迷いやすい「井桁駅」
それぞれのタイプのダンジョン駅で何故迷いやすいのか実際の駅の構造をもとに紹介していてわかりやすい。
あまり乗らない駅は迷ってしまいがちだけど、読みながら、そうだよね、だからわかんなくなるのよね〜って諦めがついた(笑)
ダーリンハニー吉川の全国縦断鉄博巡り [本]
2009年に出版された,ダーリンハニー吉川さんの本。
日本全国の鉄道に関係している博物館を巡り,それぞれの鉄道博物館についてコメントや写真でくわしく解説しています。
本書に掲載されている鉄道博物館,北海道から沖縄まで,72館。
なかなかのボリュームです。
冒頭のミュージシャンでありながら鉄道好きが高じて,トレインシミュレーターを作ってしまった向谷実さんとの対談も,お互いの鉄道愛を感じます。とても良いです。
それから,吉川さんの「鉄道芸人ができるまで」も良いです。
子どもの頃の鉄道が好きで,跨線橋からロマンスカーを見ていた話や,小田急線で箱根湯本まで行ってきた話。
それから,思春期を迎え,急速に鉄道趣味を隠すようになってしまったこと。
コントのネタで,相方の長嶋さんが「鉄道マニアが結婚相談所にくる」というシチュエーションで,子どもの頃覚えた駅名がドバーッと出てきてしまったこと。
「タモリ倶楽部」で他の鉄道好き芸能人と繋がりができて,鉄道熱が再燃したこと。
吉川さんの半生がとても興味深かったです。
本編の鉄道博物館のボリュームがすごいのですが,2009年に出版されたものですので,当然,すでに閉館してしまったものもあるのです。
例えば,この本には秩父鉄道車両公園が三峰口駅構内にあると載っているのですが,すでに閉館しています。
残念ながら公園には,SLパレオエクスプレスのための転車台が残っているくらいでした。
もちろん現在も残っている鉄道博物館もあるので,ぜひとも行ってみたいところをチェックしておきます。「東武博物館」すでにリニューアルされているので行こうと思っています。
吉川さんが子どもの頃によくいらしていた「電車とバスの博物館」も行ってみたいですね。
早稲田大学競走部のおいしい寮めし [本]
2011年発行の、早稲田大学競走部の寮めしを紹介した本。
当時の監督、磯繁雄氏のもとで、管理栄養士として食の面からサポートをしたのが著者の福本健一さん。
おいしい寮めしをカラー写真で紹介。
レシピの他にも、栄養バランス、エネルギー量、ビタミン・ミネラル、一汁三菜の献立、など栄養学についての記述も豊富。
食のバランスの大切さを痛感します。
12年前の本なので、まだ大学生の大迫傑選手(長距離ブロック)やディーン元気選手(投擲ブロック)のコメントが写真つきで載っているのもいいです。若い!大学生!って感じ。
駒澤大学陸上競技部のスポーツ応援レシピ 駅伝ごはん [本]
2022〜2023年に大学三大駅伝で三冠を達成した駒澤大学。
その駒澤大学の陸上競技部、道環寮の寮ごはんのレシピを紹介した本。
駒澤大学陸上競技部の食事は、大八木監督の奥さんの大八木京子さんがすべて作られています。
骨を強化するレシピ、貧血を予防するレシピなど、選手たちの体を作るレシピがたくさん載っています。写真も見やすくてきれい。
個人的には、所々に挟まれるコラムが興味深かったです。
道環寮の1日と題して、スケジュールが写真入りで載っていたり、朝食のメニューがある1週間を例に載っていたりするなど、とても興味深いです。
寮母、栄養士として、大学生たちを食から支えている京子さん。品数を多く、栄養バランスもよく、食欲をそそる料理の数々には頭が下がります。
できるものから、うちの毎日の料理に取り入れていきたいと思いました。
感動の鉄道絶景 死ぬまでに一度は乗りたい [本]
旅鉄BOOKS 044 感動の鉄道絶景 死ぬまでに一度は乗りたい
- 出版社/メーカー: 天夢人
- 発売日: 2021/04/17
- メディア: 単行本
日本の鉄道から見える絶景、鉄道が入った絶景をまとめた本。オールカラーでとても美しい写真がたくさん載っています。
・編集部が選んだ絶景BEST10
・海の絶景
・大地の絶景
どの写真も美しいですが、島国の日本、やはり海の絶景が豊富だし、ぜひとも見に行きたいなあと感じました。
冒頭に挙げられていた本四備讃線や表紙の氷見線など、写真で見ているだけでも美しくて心が洗われます。
旅に出たくなる一冊。
コラムに乗っていた、鉄道旅あるあるも、クスッと笑えます。
カメラの設定をしているうちに電車が走り去ったなんて、プロでもそんなことがあるんですね。
いくつか行きたくなった場所をメモして、心のなかで鉄道旅の妄想を繰り広げています。