かがみの孤城 [本]
安西こころは,中学に入学したばかりのとき,クラスメイトからのいじめがきっかけで不登校になっている。
母親とフリースクールに行くと約束したものの,当日になると腹痛で行けなくなる。
母親の期待に応えられない悔しさと,何もわかってもらえない苛立ちと,自分の気持をうまく言葉にできないもどかしさと。
すると,こころの部屋の鏡が光り輝いて,そこに手を伸ばすと引き込まれて別の世界へ。
童話に出てくるようなその城にこころを引き込んだのは狼の麺をつけた女の子。“オオカミさま”だった。
こころと同じようにこの城に呼ばれたのは,7人。すべて中学生だという。はじめは距離をとっているような7人も城に来るたび,変わっていく……。
前半は,中学校で受けたこころのいじめに,読んでいて辛くなる思いでした。
学校での友達との距離感,言動,気を使うことが多すぎて,心を擦り減らしていって……なんともやるせないです。
けれども,そんなこころが7人と出会い,お互い不登校なのだろうなと推測するところから,少しずつ7人が気持ちをさらけ出し,ぶつかりあいながらも信頼関係を築いていく姿。とても引き込まれました。
城での生活で,変わっていくこころたちの気持ちがなんとも,言葉にならないけれど。
もしいじめられているのが自分の娘だったら……,胸が痛い。
想像するだけで辛いです。でも,目をそらしてはいけないんですね。
読み応えがありました。物語で,ばら撒かれた伏線を次々と回収していて,辻村深月さんは,めちゃめちゃすごいなーと。
常総学院高校野球部―木内マジックの深層 (B・B MOOK 1288 高校野球名門校シリーズ 14) [雑誌]
常総学院高校野球部―木内マジックの深層 (B・B MOOK 1288 高校野球名門校シリーズ 14)
- 作者:
- 出版社/メーカー: ベースボール・マガジン社
- 発売日: 2016/03/14
- メディア: 雑誌
ベースボール・マガジン社から出版されている「高校野球名門校シリーズ」の一冊。
茨城県でいえば,最近は明秀日立,霞ヶ浦,土浦日大など続々と野球に力を入れる高校が増えていますが,常総学院がその先駆けといえるでしょう。
取手二高で全国制覇を成し遂げた木内幸男監督を迎え,その後の活躍ぶりは茨城県内では誰もが知っています。
その木内監督流の選手育成や,部長,コーチ,現佐々木力監督へのインタビュー。
常総学院卒業生へのインタビューも充実。
元プロ野球選手の島田直也さん,仁志敏久さんなどのインタビューも。
木内マジックとはいうけれど,実際のところは選手をずっと見ていて,プレーのスタイル,性格,調子の良し悪しなどを熟知して,できることをやっていると感じました。まわりにとってはマジックに見えるけれど木内監督にとっては,当然成功すると思ってやっている戦略なのだということです。
一にも二にも選手たちを見ること,ただそのレベルがものすごく深いのだと思います。
現在の佐々木力監督も,木内野球を踏まえた上で,現在のチームに必要だと思うことは貪欲に取り入れていく。敵チームの良さも取り入れる強さがあると感じました。
このムック本は,2016年(平成28年)に出版されていますが,その後も茨城県内の高校は常総学院をはじめとして,実力をつけてきているのではないでしょうか。
2018年の夏,茨城県大会決勝は佐々木力監督率いる常総学院と,小菅勲監督率いる土浦日大の対決となりました。監督はともに取手二高で甲子園に出場し,全国制覇を成し遂げたチームメイト。木内イズムを引き継ぐ人々がまた監督になって次の世代を育てているんだと思うと胸が熱くなります。
ただ……ただ……,持丸修一監督(2003年9月~2007年8月)について,ほぼほぼ触れられていないんですよね。黒歴史にされている感も。竜ヶ崎一高,藤代高,後には専大松戸で甲子園出場を果たした素晴らしい監督だと思いますが。
刑務所しか居場所がない人たち : 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話 [本]
刑務所しか居場所がない人たち : 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話
- 作者: 山本 譲司
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2018/05/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
著者の山本譲司さんは,衆議院議員だったときに,秘書給与流用事件を起こして逮捕,
判決確定後,控訴をせずに服役することになったが,その刑期のなかで,刑務所では凶悪犯よりも知的障害者が多いことを知る。
障害があるために,社会で生きるすべを知らず,数百円程度の万引きや食い逃げ事件を起こして刑務所に入る。刑期を終えて刑務所を出ても,暮らす場所も収入もなく再び犯罪を起こして刑務所に帰ってくる。
そのような累犯障害者(というのは山本さんの造語である)を,出所後に支援し,一定の道筋をつけて社会で暮らしていけるようにするというのが山本さんが目指すあり方なのだと感じた。
受け入れる側の体制がまだ整っていないようにも感じているが,この本に出てくる「ふるさとの会」の活動で,改善されてきている途上なのだろう。
もともと中高生向けに書かれた文章なので,非常にわかりやすいし,これからどうしていくか若い人にこそ読んでいただきたい本だと思う。
けっこう笑えるイギリス人 [本]
著者の山形優子フットマンさんが,イギリスで暮らし,イギリス人男性と結婚し,イギリスで30年以上暮らすなかで見えてきた,イギリスの良いところ悪いところを書かれている。
イギリスの医療制度だとか,子育てのあり方とか,暮らしていく上での違いが大きくて良し悪しだなあと。
笑えるとは銘打っているけれど,じっくり読むと,意見を主張しすぎないなど日本人の悪いところも浮き彫りになって,耳が痛い部分もありました。オイラ国外では暮らせないかも。
耳は痛いけれど,イギリスでの生活は興味深い点がありました。
武蔵野線まるごと探見 (キャンブックス) [本]
サブタイトルに「身近な路線の身近なトリビア」とあるように,武蔵野線のあれこれを詰め込んだ一冊。
武蔵野線はもともと貨物線として計画され,旅客を扱っていても東京の外環路線としての貨物の需要も多く,それは,鶴見-府中本町の通称武蔵野南線と呼ばれる貨物線や,浦和三角線と呼ばれる武蔵野線から東北・高崎線の大宮方面につながる貨物線,常磐線につながる北小金支線と馬橋支線など。乗りたくても乗りつぶしにくい貨物線がたくさんあります。
各駅データなども細かく載っています。
平成21年(2009年)に出版されたものなので,すでに「新吉川(仮)」は「吉川美南」として開業し,本の中では「越谷レイクタウン駅」は2008年3月開業したばかりと書かれていましたけれど,現在は一大ショッピングエリアになっているし,新三郷のイケアやコストコだとかも開業して,そういえば新三郷は上りと下りホームが貨物ヤードをはさんでやたら遠かったんだっけということを思い出しながら読みました。
2019年は武蔵野南線,府中本町-鶴見間を通る「ホリデー鎌倉快速」乗りたいですね。