熱源 [本]
樺太で生まれたアイヌのヤヨマネクフ。
リトアニアで生まれたポーランド人のブロニスワフ・ピウツスキ。政治犯の囚人として樺太の開墾に送られた。
日露戦争ごろから,第二次世界大戦終戦までの,主に樺太,それから北海道,ロシアのウラジオストック,東京などを舞台とする小説。実話をもとにしたフィクション。
だれのものでもなかったはずの樺太にロシア人や和人がやってきた。もともと住んでいたアイヌなどの先住民族は追いやられる。
ポーランドもロシアに侵略され,国を失っている。
国という拠り所のない,不安定な立場の人間。
ヤヨマネクフは,ブロニスワフは,この環境の中,どんな風に生きるのか……。
彼からからすると,完全に「和人」という自分にとっては,国の後ろ盾のない,不安定な立場である彼らを完全に理解できるのだろうか……というのは感じた。
彼らの思い,抑圧された環境で生きる彼らを想像するのはある意味苦しい。
歴史的,政治的な背景も不勉強なものだから,「熱源」を読みながら,今ひとつ判らないところを調べながら読んでいた。
妻や子,弟子などに疫病で先立たれ,戦争で失うものも多かったヤヨマネクフやブロニスワフ・ピウツスキ。
極寒の樺太においても,生きる希望,道はあるのだ。
彼らが「熱」だと感じたのもが。
読後感が重い。重いけれども「熱源」の意味を考えると,希望が見えるような気がする。
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