月魚 [本]
古書店『無窮堂』は,雑木林の奥,深い闇のなかにひっそりと佇んでいる。
店主の本田真志喜(ほんだましき)は,この古書店の三代目。
二十五歳の若さであるが,生まれたときから祖父に古書のイロハを叩き込まれた生粋の古書店主である。
瀬名垣太一(せながきたいち)は真志喜と幼馴染のやはり古書店主である。真志喜とは違い卸専門で小売はしない。
昔からの因縁,それぞれの父親との関係,瀬名垣の古本屋としての才覚,内輪のしきたりに囚われすぎる古本業界。様々なものが,背名垣と真志喜をがんじがらめにする。
古書というある意味閉ざされた業界と,才能はあっても若いというだけで見下される二人。
あるとき,故人の遺した蔵書を買い取る依頼を受けた瀬名垣,真志喜と共に軽トラックで出向くが……。
文章そのものが美しいし,耽美だし,古書を通した世界観が現実のものではないような,ある種閉じ込められた世界のように感じた。
古書を扱いながら,そこには人の営みがあり,それは綺麗なものだけではなくて,欲に溺れた醜さもあり……。
オイラの文章では全く月魚の小説の美しさは出てこないが,うん。すごいよ。素晴らしいよ三浦しをんさん。
ただ,好き嫌いは分かれるような気がする。同性愛の匂いも感じさせるし。そこが売りでもあるけれど。
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